作曲家の為の秀逸コード進行4
今日は歴史的名コード進行について。
Just The To Of Us(Grover Washington Jr)
(作曲:Grover Washington Jr Ralph MacDonald)
Grover Washington Jr - Just the two of us
印象的なコード進行とベースのフレーズでおそらく聴いたことがある人は多いと思う。
コード進行そのものは曲ではないが、曲を作る上で大きなヒントや土台になるので、そのコード進行を頂いて曲を作ってしまおうという事はよくある。
特にこの曲は「Just The To Of Us進行」という名前まで付いてしまってるほどだ。
D♭M7 C7 Fm7 E♭m7 A♭7
D♭M7 C7 Fm7
しかしこのコード進行、コード進行自体が印象的で存在感があるのでこれを基にオリジナリティの高い曲を作るのは難しいと作曲家の蔦屋好位置氏(確かそうだった)がいつかテレビで言っていた。
ではこの進行を使った曲をいくつか紹介する。
丸の内サディスティック(椎名林檎)
国内ではこれが一番有名かもしれない。
愛を伝えたいだとか(あいみょん)
あいみょん - 愛を伝えたいだとか 【OFFICIAL MUSIC VIDEO】
最近のものだとこれとか。
What You Won’t Do For Love(Bobby Caldwell)
Bobby Caldwell - What You Won't Do for Love (Album Version)
懐かしいものだとこれか。
このコード進行はもともと都会的でお洒落な印象だが、アクの強さを入れてみたり、ロック的だったり、新たに良きメロディーを紡いでみたり、それぞれが強い個性とアイデアでオリジナルの作品に仕上げられていて素晴らしい!
我こそはと思う者はこの「Just The To Of Us進行」で一曲チャレンジしてみては?
作曲家の為の秀逸コード進行3
今日は日本を代表するアイドルグループ「嵐」のヒット曲に仕込まれたスパイシーなコードワークについて。
Monster(嵐)
(作曲:CHI-MEY)
[J-POP] 2010 Monster [ARASHI](아라시)
1:20からサビの部分を聴いてみるとなんか
冒頭からいきなり香ばしい感じで...
これは何だ?
サビのコードだ。
E♭ G♭ Fm G7 G7/B
Cm7 B♭ A♭ A♭/B♭
E♭/G A♭ B♭ G7/B
Cm7 B♭ A♭ A♭m B♭
赤字、サビ2小節目のG♭がもういきなり臭う。
これは何かと言うと同主調であるE♭mから借りて来たコードだ。
同主調とはお互いに主音が同じ長調(メジャー)と短調(マイナー)の事である。
この曲の場合はキーがE♭なのでE♭mキーから借りて来たコードだ。
メジャーキーの曲がいきなりマイナーになるのだ。
一瞬ではあるがこれも部分転調だ。
これをサビ2小節目、コード2つ目でいきなりぶっ込んで来るからエグいのである
後はこの曲のサビ、前半と後半で同じメロディーを違うコード進行で聴かせているというのもいいアイデア!
他セカンダリードミナント、サブドミナントマイナー、コードの転回系などうまく組み合わせて作られてる。
フックがてんこ盛りの曲だ。
試しに、この借用コードは使わず、キーの本来のコードを使い、他セカンダリードミナント、サブドミナントマイナーなども使わずダイアトニックコードだけ使い、さらに転回系を使わずに作ってみたらこうなった。
なんかこう薄味である。物足りない。
でも本当の事を言うと、もっとつまらなくなるんじゃないかと思ったがこれでも十分いい曲だw
さすがはジャニーズのコンペを通るだけの事はある。
やはりメロディは重要である。
一応聴き比べしやすい様にオリジナルの方も作っておいた。
やはりこっちの方がこうパンチとメリハリがある!
曲の中で聞くと9小節目のトニックの第1転回系も効果的だとわかる。バシッと決まるべきトニックコードに少し浮遊感を与え、次のサブドミナントコードの根音に半音でアプローチするというのがスリリングなのだろう。たかが転回系でも曲の構成の中では効果的なのだ。
作曲家の為の秀逸コード進行2
前回は曲にグッと来るフックを与えるノンダイアトニックコードについて書いたが、今日は転調について。
雨にキッスの花束を(今井美樹)
(作曲:KAN)
Yawara! Opening 02 - 雨にキッスの花束を
この曲は柔道アニメ「YAWARA!」の主題歌。作曲がKAN氏だ。
そう、あの「愛は勝つ」が大ヒットしたKAN氏の作曲だ。
KAN氏は世間一般的には「愛は勝つ」の一発屋なイメージを持ってる方も、もしかしたらいるかもしれないが、一発しか売れなかったのが不思議なくらい素晴らしい作曲家だ。
そもそも同じミュージシャンとしては一発屋といって小馬鹿にするような事は絶対にない。
一発も当ててない立場から一発でも当てた人を馬鹿にする事はできないというのはきっと小学生でもわかる理屈だろう。
まぁ好き嫌いは言ってもいいと思うけどね。
では曲を聴いてみよう。
0:49〜1:05
サビの部分前半8小節だ。
おわかり頂けただろうか...
歌詞で言うと
「嘘でしょう立ち止まったまま」
の部分でグッと魅かれるものがないだろうか?
サビの前半8小節のコード
F♯m7 F♯m7/B EM7 C♯m7
F♯m7 F♯m7/B G♯m7 C♯m7
Am7 Am7/D GM7
F♯m7 F♯m7/B
赤字の部分である。
このAm7に行った瞬間かなり悶えさせられる。
ではこの悶えされられた部分に何が仕込まれたのかと言うと、この赤字部分だけ転調してるのである。
この曲のキーはEメジャーで、コード譜の前半4小節はキーEの
Ⅱm7→Ⅱm7/Ⅴ→ⅠM7→Ⅵm7
(2→5→1→6)
Ⅱm7→Ⅱm7/Ⅴ→Ⅲm7→Ⅵm7
(2→5→3→6)
と進行して次のAm7ではキーがGメジャーに転調している。
Gメジャーに転調して
Ⅱm7→Ⅱm7/Ⅴ→ⅠM7
(2→5→1)
そしてすぐさまEキーに戻って
Ⅱm7→Ⅱm7/Ⅴ
(2→5)
である。
それほど長くなくすぐ元のキーに戻る転調を部分転調と言う。
このテクニックは
「聴き手の調性の期待を裏切る」
という効果がある。
我々の耳は普段無意識に調性を感じながら音楽を聴いている。
だから急に転調されると耳がびっくりするのだ。
調性とは簡単に言うとその曲のキーの事である。
「いや~音楽の勉強なんてしたことないからキーの事なんか考えた事ないしそんな事意識してなんかいない!」
という事ではない。
我々が生まれてきてずっと耳にしている、世間一般に流れてくる音楽は全部調性音楽でありそれを聴いて育ってるので自然と調性が養われてるのだ。
日本人で「ドレミファソラシド」を歌えない人はいないだろう。
実際歌うには慣れてなくてピッチがふらつくという事はあっても「ドレミファソラシド」のイメージはできるだろう。
それは義務教育だったり普段生活で流れてる調性音楽のおかげだ。
この「ドレミファソラシド」を基に調性音楽は作られてる。
カラオケで「キー1個だけ下げてー!」というのはよくある事だ。
例えばキーがDだったら一個下げでD♭になるが、調号で言うと
「♯2こ付いてるのを全部取って♭5個付ける」
という複雑な作業になる。でもそんな事は誰も考えてないでキーを変えて歌える。
「1個下のドレミファソラシド」みたく感じてるのだ。
それが調性だ。「移動ド」とも言う。
このカラオケの「1個下げ」は相対音感とも言う。
だから絶対音感のある人は「絶対」というくらいだから上記の複雑な作業をしなければならないから転調が苦手らしい。
絶対音感も良し悪しだ。
あと音痴の人も例外である。
このように生活で常に調性を感をじて、備わってきてるものを裏切るので転調の効果は絶大なのである。
KAN氏の作曲テクニック恐れ入った。
最後にKAN「愛は勝つ」の誕生秘話を。
ある日KAN氏を友人が訪ねて来た。
どうやら彼女にフラれそうだという恋愛の相談らしい。
しかしKAN氏はその時作曲中で相当うっとうしかったらしく生返事で、
「大丈夫、愛は勝つよ」
とテキトーな事言ってその友人を帰したらしい。
これは凄いエピソードだ。
「愛は勝つ」
は恋愛応援ソングではなく、
女々しい恋愛相談をしてくるウザい友人をテキトーな事言って撃退した歌なのだ。
なんたる皮肉屋。
最後と言いながらもう一つ!
KAN氏の俺が一番好きな曲を聴いて欲しい。
もう本当にカッコいい曲!
惚れた!
俺の好みの押し付けになってしまう事を承知で言わせてもらえば、きっと今日から毎日聴きたくなるくらいカッコいい曲!
サビのセクション、シンコペーションするスピード感のあるテンポとロングトーンのストリングスとの対比が気持ちいい!
絶対聴いて欲しい!
エンディングにも大きなシカケがあるのでお楽しみに!
※編曲は佐藤準氏
この「それでもふられてしまう男(やつ)」と言う曲、実は「愛は勝つ」のカップリング曲なのだ。
「愛は勝つ」のカップリングが「それでもふられてしまう男」とはこれまたとんでもなく皮肉が効いてる。
当時のKAN氏
若くて可愛らしい感じ。
こう見えて皮肉屋で、音楽に対するこだわりも強く当時よく音楽の事でスタッフと喧嘩になったらしい。
現在はこちら
間違えた!
KAN違いだ!w
こっちだ
年齢を重ねた感じもまたいい。
ベーシストの為の秀逸ベースライン2
質の高いベースのフレーズやプレーを語る上で避けて通れないのが黒人ベーシストだ。
奴らの身体能力とハーモニー感覚、何を弾いても弾むようなあのノリにはもうどうやっても敵わないから本当のところは放っておきたい案件だ。
もう嫉妬とコンプレックしかなく、ブラックミュージックは嫌いという事にさえしたくなる。
きっと奴らには一生悩まされ続けるだろう...
俺みたいにそんなひねくれた思いを抱くベーシストもいない事はないだろう?w
今回はそんな俺の嫌いな黒人ベーシストについてだ。
Street Walkin’ Woman(Marlena Shaw)
ストリートウォーキンウーマン(マリーナ・ショー)
(bass:チャック・レイニー)
Marlena Shaw - Street Walkin' Woman
マリーナ・ショーのアルバム「Who Is This Bitch, Anyway?」から「Street Walkin’ Woman」だ。
スピード感のある16ビートのセクションとスウィングのセクションが交互に展開されるスリリングな曲だ。
ベースはチャック・レイニー御大。
御歳78歳だ。(2019/3/1)
本来なら
「おじいちゃん、長生きしてね(o^^o)」
くらいの年齢であるが現在も現役だ。
この曲のベース、最初から最後まで秀逸なのだが、今回ピックアップしたいのはヴァースにおけるベースフレーズ。
この曲は4小節の短いヴァースが曲の中で3回出てくるのだが、どれも全く違うアプローチで全部ノリノリご機嫌&超ハイテクニックなのだ。
ヴァース1 0:16
ヴァース2 0:36
ヴァース3 1:21
キレッキレである...
お手上げだ...
俺のヤワな指では何本あっても追いつかない。
ところがチャック・レイニーによるこのフレーズは指一本で弾かれている。
「え?」
そう。「え?」である...
チャック・レイニーのワンフィンガー奏法は人差し指一本で、16分の早いフレーズは人差し指を上下させるオルタネイトでピッキングしてるのだ。
だから言ったではないか..,
奴らの身体能力にはもうどうやっても敵わないし一生悩まされ続けるだろう。
とは言ったものの一応前向きに頑張ってみてはいる。
実は俺、チャック・レイニーに会った事がある。
マリーナ・ショーのビルボード公演で来日した際、関係者の御厚意で楽屋まで入れてもらったのだ。
そしてドキドキしながら会った時の印象は、
デカい....
例えるなら巨木だ。
いや、もう御神木と言った方が正確だ。
恐る恐る握手を求めたら何とチャックのヤロー、俺に指相撲を挑んで来やがった。
「負けてたまるか...せめて指相撲だけでも...」
俺の短い親指は一瞬にしてチャックの長い親指にねじ伏せられた。
なんか勝って喜んでた。
お茶目な先輩であった。
良い思い出である。
※ところどころ大先輩に対する不適切な表現を含みますがリスペクトの裏返しなのでご了承ください
作曲家の為の秀逸コード進行1
コード進行は曲を構成する根幹だと思っている。
もちろん主役はメロディーだが、同じメロディーでも付けるコード進行によって曲は信じられないくらい変わってしまうものである。
言うまでもなくトラックもサウンドも重要であるが、その作業に取り掛かる前のメロディーとコード進行で曲の根幹は決まってしまうと俺は考えてる。
サラッと聴けていい感じのPOPな曲も実は随所にさりげないコードアイデアの技が光ってる事がほとんどだ。(特にJ-POPにおいては)
なので常日頃、次のプラグインのセールが気になってしょうがないDTMerも、大枚はたいて買ったケンパーの実力を早く試したい宅録ギタリストも、トラック作りに入る前に書かれたコード譜のアイデアをもう一度練ってみたらもっと曲が素晴らしいものになるかもしれない。
このシリーズでは名曲の優れたコードアイデアを紹介していく。
コード進行は一曲通しての構成が重要である事はもちろんなのだが、聴く人にとってそのワンポイントがその曲に大きなフックを与えてると思う部分に絞って解説したい。
Lemon(米津玄師)
(作曲:米津玄師)
最近の曲なので知ってる人も多いと思う。
前述で「さりげないコードアイデア」と書いているが、俺の言うそれは主に借用コードや代理コードのうまい使い方の事である。
つまりダイアトニックコード(曲のキーの音階のみから導き出されるコード群)以外のコードの使い方である。
これをうまく使う事で聴く人に大きなフックを与える事が出来ると考えてる。
この米津玄師氏のLemonという曲もところどころにコードワークのテクニックが使われてるが、俺の思う一番フックになった部分を紹介する。
その部分の前の小節から再生されるように貼っておいた。
Lemon(その問題の箇所)
おわかり頂けただろうか....
1:21のところだ。
歌詞で言うところの
「帰れない」
の赤文字の部分である。
コードで言うと
Fm7-5
という事になる。
理論的な事はまず置いておいて、これを聴いてフックを感じたかどうかの方が重要だ。
感じない人は別にこのアイデアを今後に生かさなくてもいいと思う。
俺個人的にはここのコードはグッと来るフックを持った部分である。
このパターン、特別類い稀なアイデアというわけではなく過去にも割とあるのだが俺はこのパターンは好き。
例えるなら、たまに食べる事はあるけど何度食べても美味しい好みの食べ物みたいなものかなw
しかし曲全体の構成の中で使うタイミングのセンスとしては米津氏のこの曲はやはり絶妙なテクニックだと思う。
ではこれを聴いてグッと来た人に少しだけ詳しく解説していく。
別に何も感じなかった人はここで読むのを終えて頂いて結構。
出来るだけ譜面や理論的な部分は使わずに解説したい。
何故なら音楽理論にアレルギーを持つ人は長々としたそういう解説を読んでると頭痛がしてくるからだw
俺もそうだw
目的はこれを読んだ人(や俺w)がこの曲のアイデアを今日から自分の作品に応用していける事であり、それが達成できれば理論など二の次である。
まず、この曲のキーはBメジャー。
問題のFm7-5は度数でいうところの
♯Ⅳm7-5
という事になる。
もちろんダイアトニックコードではない。
このパターンが何故グッと来るフックを持ってるかをあえて言葉で説明するならば、
「終止感の期待を裏切られたから」
だと思う。
では裏切られなかったらどうなっていたのか?
再生箇所のコードを見ていこう。
C♯m G♯m E F♯ Fm7-5
これが曲の裏切られたパターン。
問題のコードの前、E F♯と進行してるが、これはE(サブドミナント)F♯(ドミナント)と完全に終止形のパターンだ。これでいくと次のコードはB(トニック)と耳は予想するのだが裏切られる形となった。
ここで一つ、「偽終止」という言葉だけ説明させて欲しい。
偽終止とは終止形の本丸ではないが(本丸はトニックⅠmajor)聴覚上ある程度終止感が得られるコードの事である。
ダイアトニックコードのⅥm、Ⅲmである。この曲のキーで言うところのG♯mとD♯m。コードを演奏できる楽器を持ってる人は耳で確認してみて欲しい。この曲ではD♯mは少し強引に聴こえるかもしれないがG♯mはしっかり終止感を感じると思う。
何故これらのコードが偽終止に使えるかと言うと、トニックコードと構成音が似てるからである。
ではFm7-5は何なのかというと、俺はこれも偽終止の一つだと思う。
何故断定しないかと言うと音楽理論は理論と言いながら時に解釈が分かれたりする事があるのと、俺が楽典的音楽理論にあまり明るくないからだw
ちなみに楽典は読んだ事がない...
何故偽終止だと思うかと言うと、Fm7-5は転回するとG♯m6(Ⅵm6)になる。
だから偽終止のG♯mと構成音が似てるので偽終止の代理コードとして使えるという事になる。
なので逆に言えばFm7-5の代わりにG♯mにしてもこの曲の流れは成り立つ。各自音で確認してみて欲しい。
でもこの曲の通りFm7-5の方がグッと来るものがないだろうか?
※ちなみにG♯m6はこの曲の平行調であるG♯mの旋律的短音階(メロディックマイナースケール)から導き出されるコード。
結論:♯Ⅳm7-5は偽終止の代理コード
このように裏切られる事になったのだが、では裏切られて終わりかと言うと...
曲の続きを聴いてみよう。
C♯m G♯m E F♯ B
おぉ!!!
先ほど俺や皆さんが予想したB(トニック)でガッツリと終止してるではないか!
最初はおあずけしにて最後はちゃんとエサをあげるって感じかな。
じらしておいて最後は挿れてあげるとも言える。
このように、世に出てる名曲はサラッと聴いてしまえば気付かないようなところに絶妙なコードテクニックを使っている。
もちろんダイアトニックコードだけで書かれた曲が必ずしもつまらない曲だとは言ってない。ダイアトニックコードだけで書かれた素晴らしい曲も多数ある。ベットミドラーのローズや前回ブログで取り上げたポールマッカートニーのシリーラブソングもダイアトニックコードだけで書かれている。
かく言う俺も本当はダイアトニックコードだけで書いて素晴らしい作品に仕上がった曲の方がコードを凝ったものより優れていると思っている。
でも何故凝ったコードアイデアを研究するかと言うと、一つはその方が聴く人にフックを与えるテクニックとして簡単だからというのがある。もう一つは選択肢を広げる事。コードワークのテクニックを知らないのでダイアトニックコードだけでしか書けないのと、知ってる上であえてシンプルなコードで仕上げたのとはワケが違う。
こういう工夫を知ってた方が作曲人生は豊になると思う。
最後に、米津玄師氏は「ハチ」という名前でボカロPとしてyoutubeで人気を博したらしいが....
自分で歌えてそんなイケメンなら最初から自分で歌えよw
ベーシストの為の秀逸ベースフレーズ1
ベーシストなら曲に対してどのようなベースラインを書こうかというのはいつも考えさせられる事だ。
試行錯誤してもなかなかしっくり来ず「これでいいのか?」と暗礁に乗り上げてしまう時もある。
かと言えば驚くほど簡単に「この曲にはこれしかない!」というフレーズを掴める時もある。
しかしどんな時でもその時の自分のベストを尽くして仕事を終えなければならない。
その曲に対してのベースフレーズのセレクトはその人のセンス。
そしてそのセンスはその人の過去の音楽的蓄積から創られてると思う。
俺は過去多くのベーシストのフレーズやプレーに感動させて頂いた。
今後も悩める時は先人の偉業からヒントを貰えるよう、覚え書きとしてここに記して行こう。
今回の曲は
シリーラブソング(ポール・マッカートニー&ウイングス)
Silly Love Songs(Paul McCartney & Wings)
(ベース:ポール・マッカートニー)
この曲で「秀逸ベースライン」だと感じた部分はヴァースとコーラス。この曲、ブリッジ以外はヴァースもコーラスもインタールードも同じバッキングとなっており、これらのセクションが曲の大部分を占める。
聴いてみるとイントロのリズムインの部分から躍動感があり、かつメロディアスなベースラインが聴こえて来る。気分がウキウキしてくるようなベースラインだ。
この曲のヴァース、コーラス等のコード進行は、
C Em F F
である。
よく動くベースラインの割には思ってたよりもシンプルなコード進行で驚く。
我々がベースフレーズを書いて行く時に、まず譜面のコード進行を参考に曲のノリ、メロディー等を踏まえ、ベースをイメージしていくと思う。
もし俺なら現場で曲を聴き、コード譜を見た時にこのベースは書けるだろうか...
譜面ヅラのコードに縛られずポンッと一歩だけ飛び出れるようなセンスと発想が必要とでも言おうか...
後出しジャンケン的に言わせてもらえば、コード進行を
C C/G Em Em/G F F/A
のように小節の3拍目で転回形として、その間を経過音で繋いでるとも言えなくないが完全に後付けだ。
こんなコード譜はおそらく書かれてないだろう。
サラッとこのフレーズが湧いてくるセンスが羨ましい。
このベースがウキウキとした躍動感を感じるのは書かれたフレーズだけの賜物ではない。
ポールの素早く振り抜くピッキングのスピードと音符の長さの使い分けなどプレー面にもある。つまり、最後はやはり右手と左手の絶妙な技が決め手となる。
聴いてみるとコードCの1小節はスタッカートで弾ききり、次Emからはテヌートとスタッカートをうまく織り交ぜた作りとなっている。この音符の長さの使い分けもこの曲のベースのノリのキモである。
※スタッカート:表記の音符の半分の音価で演奏
(本来なら譜面を用いた詳しい解説をしていくところだが長くなるので今回は省かせてもらう)
この曲のプレー、指弾きでも弾けない事はないだろうが、ポールのベースサウンド特有のアタック感はやはりピック弾きによるところが大きいと思うのでできればピックで弾いて欲しい(笑)
最後に、このSilly Love Songsという曲は何を歌っているのかと言うと、
「ラブソングなんて馬鹿げたもんだと思ってるようだが俺はそうは思わない!ラブソングの何が悪いんだ?」
まぁ大まかに言うとこう言う内容。
一説には音楽評論家から「ポールはラブソングしか歌わない」という批判を受け、それに対するアンサーソングだったと言われている。
批判に対しこのような素敵な曲で返す事が出来るというのもミュージシャンの素晴らしいユーモアだと思う。
俺もこうあれたらどんなに素敵な事だろう...