作曲家の為の秀逸コード進行6(コードの転回形について)
今回はコードの転回形について。
コードの転回とはコードの音の並び替えをする事である。
例えば「コードCの構成音は?」と聞かれたら
「ド(C)・ミ(E)・ソ(G)」
ととりあえず答えるだろう。
音を低い方から順番に積み上げてる。
これをコードの基本形という。
ではコードの構成音を並び替えてみる。
基本形の2音目、ミ(E)から並び替えて
ミ(E)・ソ(G)・ド(C)
となる。
これを第一転回形という。
表記は
C/E
同様に、
ソ(G)・ド(C)・ミ(E)
は第二転回形。
C/Gと表記。
CM7のように4和音を転回する場合も同じで、
シ(B)・ド(C)・ミ(E)・ソ(G)
と積むと第三転回形となり
CM7/Bと表記。
コードの転回形は構成音を並び変えてるだけなので、そのコードを構成する音は変わってはいない。
上記の転回の例はどれもCのコードではある。
ではなぜコードの転回形を使うのか。
例1
例えば下記のコード進行の場合。
C G Am G
こう変えてみるとどうだろう。
C G/B Am G
ベースラインに連続した2度の下降のスムーズな進行が得られる。
G/Bは第一転回形だ。
この例は頻出パターンで、Ⅰ(1)→Ⅴ(5)→Ⅵm(6)の場合、世の中の曲の9割くらいは上記のような転回形ではないだろうか?w
代表的な曲はこれだろう
このパターン、他にも例は無限にあるだろうw
例2
1:04からのBメロのコード進行。
C D/C Bm7 B7/D♯ Em7 E7/G♯
D/Cは第三転回形。
C→Dのコード進行でDに進行してもベースがCをステイさせる事でなんとも言えない緊張感を演出している。J-POPで頻出のパターンだ。俺も結構好きなパターン。
続いてBm7→B7/D♯
Bm7がB7という「セカンダリードミナントコード」に変化し、さらに第一転回形を伴ってマイナーからメジャーに変化した3度のD♯を強調する作りとなっている。
そして次のEm7のくだりでも同じ作りになっている。
このパターン、言葉で説明するのは難しいが、言うのであれば
「コードが前に向かって進行していく力強さ」
を演出できる手法と俺個人は思っている。
それを2回繰り返す事によって更に力強さを増してるのではないだろうか。
そしてふと気付くとAメロ(0:17)二つ目のコードは例1の転回形が使われてるw
例3
少しスパイシーな使い方だとこんな曲はどうだろう。
0:19サビの部分のコード進行。
B7/A E/G♯ F♯m7 B7 EM7
キーがEなのでサビアタマのコード進行は
ドミナント(B7)→トニック(E)
という当たり前なコード進行なのだが
B7/A(第三転回形)→E/G♯(第一転回形)
とする事でなんとも印象的な聴こえ方になっている。
例4
ボン・ジョビの名バラード。
この曲のブリッジ(1:05)のコード進行。
C♯m7 B/D♯ A/E B/F♯ A B
ここまで転回形を連発すると結構刺激的だ。
B(第一転回形)、A(第二転回形)、B(第二転回形)とする事で見事に連続して上昇するベースラインを構築できた。
ちなみにこのコード進行、転回形を使わないとどのように聴こえるか作ってみた。
まぁ...
普通だw
転回形を使わないとC♯m7以降BとAを行き来してるだけである。
一応聴き比べ用にオリジナルの進行の方でも作ったのでこちらもどうぞ。
連続して上昇するベースラインを作った事によりコーラスに向かって盛り上げていく効果を強調できている。
コードの転回系は使い方次第で伴奏をスムーズに聴かせたり、逆により印象的に聴かせたりする事が出来る手法だと思う。
積極的に取り入れて行きたい。
そしてコードの転回系はその音を担うのはベースである。
譜面の時点で指定されてる事がほとんどだが、もし効果的なアイデアが浮かんだらベーシストから提案してみるのもよいだろう。
ベーシストは転回形の指示があった場合はただその音を弾くのではなく、どのコードの何度の音なのかをしっかり把握しておく事は必須だ。
そうでなければそのコードにおけるフレージングが正しいものにならないのは勿論の事、どのような和音の一部を自分が担ってるのかを意識する事はミュージシャンという仕事の責任感であり、音の説得力に関わってくるのだ。